雑記。
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※同人注意 。
※ノーマルと見せかけて、BL気味です。
※以上を理解出来ない、知らない、嫌いな人はバックプリーズ。
※閲覧後の苦情は受けません。
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Desperatio
漏れる光に創られた影は伸びやかではなく、小さな輪郭を描いていた。
事物を浮き上がらせるかのようなくっきりとした陰影。
昼時だろうか。
窓の無い殺風景な四方。
ゆらり、ゆらりと穏やかな揺れが伝わり、遠くの喧騒が鼓膜を打った。
親子連れの団体客らしい。
はしゃぎ様からして帝都は初めてらしく、母親達が他の乗客の迷惑だからと、子供を嗜める。
漸く静けさを取り戻すかと思われたが、その母親達がやれ子育てがどうだとか、近所付き合いの他愛もない話に花を咲かせ始めた。
釣られて子供らが控えめにではあるが、遊びだす。
予想通りではあるが、それが以前と同等の喧騒に変わりだすのは容易かった。
彼女達は再び子供に注意を促すのだが、当の母親達はといえば自分達も世間話が止められないらしく、同じ事を何度も繰り返していた。
本末転倒だ。
無意識に口の端を吊り上げると、彼はこんな状況で笑っていられる自分に気がついた。
能天気が移ったか?
随分毒されている。
今度会う時にはあの馬鹿に責任を取ってもらわねばなるまい。
彼は鉄製の手枷を手持ちぶさたに弄んで、所々老朽化している木の壁を睨め付けた。
罪人を護送するにしてはお粗末な造りなのは、軍ではなく民間のものだからだ。
どうやら先の内乱で多大な損害を被った為に、軍は人手不足のようだ。
こうして民間船の一角に乗せられているのだから、相当疲弊しているのだろう。
(ゼロムの軍事利用など…)
確かに圧倒的な力の差を見せつけられた。
教会権力は壊滅状態に等しく、父は息子の命さえ売り出したのだから。
軍の手に堕ち、廃墟と化した聖都。
父を責めるつもりはない。
不甲斐ない不肖の息子だ。
皇帝暗殺の容疑を掛けられ逃亡し、挙げ句聖都を明け渡す元凶を作り出し。
その上白化した人々の群れを抜け出すのに精一杯で、父に助力出来なかった。
拘束された父は自分を恨んだだろうか。
失望し、さぞかし力落ちしている事だろう。
プランスールより街道を経て、シェヘラ砂漠を抜けるカルセドニー隊には、その先の検問を抜ける手立てが無く、ならばと投降した。
元よりそのつもりであったし、それが先であろうと後であろうと大差ないと判断した。
ただ、一つ条件を提示して。
自分はともかく、部下の免責を請うた上での事である。
だが、取り囲む軍はソーマを解きかけたカルセドニーの申し出を、一蹴した。
拘束の為に振るう武力は厭わないと息巻く彼らに、結果的には反抗してしまった事になるのだろう。
弁明の余地もない、不利な状況に追い込まれてしまった。
損害は甚大とはいえ、バイロクスには悪いが、ペリドットが逃げおおせた事に、彼は僅かな満足感を得ていた。
(バイロクスには、僕を恨む資格があるな……)
勝手に付き合わせた数は、知れない。
当たり前の献身に、自分は絶対の信頼という形で誠意を返しているつもりだが、独り善がりと言われればそれまでかもしれない。
傍に居るのが当たり前。
暖かく見守ってくれる兄のような。
そういえば、シングも一人っ子だと云っていた。
あの田舎、何といったか……シーブル?
(……………何で僕はさっきから)
あいつの事ばかり。
信じられない。
つい最近まで、敵だった相手の事が、気になって仕方なかった。
頭を抱えてうなだれる。
脳裏には、少女を心配そうに見る彼の仕草。
全く。
我ながら物好きな。
しこたま壁に頭を打ち据えると、壁の外にたじろぐ気配がした。
(……何をやってるんだ、僕は)
アイツはただの好敵手。
確かに最初はただの田舎者だったが。
未だ田舎者は変わらないか。
短期間で見違える程に腕を上げている。
元々太刀筋は悪くなかったけれど、未熟で物足りない技量が、何時しか、何時の間にか。
大聖堂で奴と対峙する瞬間は心地好かった。
昂揚し、研ぎ澄まされる神経。
戦場のそれだ。
もっと深く、永く味わっていたい。
擦り切れるまで、砕け散るまで。
(もう一度、剣を交えたら)
答えが出るかもしれない。
だが、無理だ。
自分達を拘束した軍人。
あれは、既に罪人を裁く様相を呈していた。
自分一人を捕らえればすむと思っていたのに、バイロクスや結晶騎士全てに捕縛命令が出されているのは、カルセドニーにとって計算外だった。
軍は、徹底して教会の権力を削ぐだろう。
先は見えている。
悲観ではない。
ただ、少し。
――……疲れたな。
諦めぬ力。
シングならきっと何とかしようとあがくんだろうが。
自分一人の命と引き換えに、幾多の部下の命が救えるなら安いものだと、思ったのも事実。
恐らく、希望した皇帝への目通りも叶わぬだろう。
パライバ様は、内乱に対して遺憾を顕にされていると聞く。
教会への不信感も深いと。
自分は――……
もう二度と、あの能天気に調子を狂わされる事が無いのだろう。
信念を突き崩される事が無くなれば、自分を保てる。
奇妙な充足感と船室の微妙な揺れに任せて、カルセドニーは、ゆっくりと瞼を閉じた。
☆☆☆コメ☆☆☆
微妙ーな、シンカル、ですよ。
プランスールの後、って感じで。
適当な散文なので突っ込みは無しで。
時系列とか間違ってたらすいません。
考え過ぎかも、やけど、シーブルとカルセドニーって、やっぱ意図的なんかな……
漏れる光に創られた影は伸びやかではなく、小さな輪郭を描いていた。
事物を浮き上がらせるかのようなくっきりとした陰影。
昼時だろうか。
窓の無い殺風景な四方。
ゆらり、ゆらりと穏やかな揺れが伝わり、遠くの喧騒が鼓膜を打った。
親子連れの団体客らしい。
はしゃぎ様からして帝都は初めてらしく、母親達が他の乗客の迷惑だからと、子供を嗜める。
漸く静けさを取り戻すかと思われたが、その母親達がやれ子育てがどうだとか、近所付き合いの他愛もない話に花を咲かせ始めた。
釣られて子供らが控えめにではあるが、遊びだす。
予想通りではあるが、それが以前と同等の喧騒に変わりだすのは容易かった。
彼女達は再び子供に注意を促すのだが、当の母親達はといえば自分達も世間話が止められないらしく、同じ事を何度も繰り返していた。
本末転倒だ。
無意識に口の端を吊り上げると、彼はこんな状況で笑っていられる自分に気がついた。
能天気が移ったか?
随分毒されている。
今度会う時にはあの馬鹿に責任を取ってもらわねばなるまい。
彼は鉄製の手枷を手持ちぶさたに弄んで、所々老朽化している木の壁を睨め付けた。
罪人を護送するにしてはお粗末な造りなのは、軍ではなく民間のものだからだ。
どうやら先の内乱で多大な損害を被った為に、軍は人手不足のようだ。
こうして民間船の一角に乗せられているのだから、相当疲弊しているのだろう。
(ゼロムの軍事利用など…)
確かに圧倒的な力の差を見せつけられた。
教会権力は壊滅状態に等しく、父は息子の命さえ売り出したのだから。
軍の手に堕ち、廃墟と化した聖都。
父を責めるつもりはない。
不甲斐ない不肖の息子だ。
皇帝暗殺の容疑を掛けられ逃亡し、挙げ句聖都を明け渡す元凶を作り出し。
その上白化した人々の群れを抜け出すのに精一杯で、父に助力出来なかった。
拘束された父は自分を恨んだだろうか。
失望し、さぞかし力落ちしている事だろう。
プランスールより街道を経て、シェヘラ砂漠を抜けるカルセドニー隊には、その先の検問を抜ける手立てが無く、ならばと投降した。
元よりそのつもりであったし、それが先であろうと後であろうと大差ないと判断した。
ただ、一つ条件を提示して。
自分はともかく、部下の免責を請うた上での事である。
だが、取り囲む軍はソーマを解きかけたカルセドニーの申し出を、一蹴した。
拘束の為に振るう武力は厭わないと息巻く彼らに、結果的には反抗してしまった事になるのだろう。
弁明の余地もない、不利な状況に追い込まれてしまった。
損害は甚大とはいえ、バイロクスには悪いが、ペリドットが逃げおおせた事に、彼は僅かな満足感を得ていた。
(バイロクスには、僕を恨む資格があるな……)
勝手に付き合わせた数は、知れない。
当たり前の献身に、自分は絶対の信頼という形で誠意を返しているつもりだが、独り善がりと言われればそれまでかもしれない。
傍に居るのが当たり前。
暖かく見守ってくれる兄のような。
そういえば、シングも一人っ子だと云っていた。
あの田舎、何といったか……シーブル?
(……………何で僕はさっきから)
あいつの事ばかり。
信じられない。
つい最近まで、敵だった相手の事が、気になって仕方なかった。
頭を抱えてうなだれる。
脳裏には、少女を心配そうに見る彼の仕草。
全く。
我ながら物好きな。
しこたま壁に頭を打ち据えると、壁の外にたじろぐ気配がした。
(……何をやってるんだ、僕は)
アイツはただの好敵手。
確かに最初はただの田舎者だったが。
未だ田舎者は変わらないか。
短期間で見違える程に腕を上げている。
元々太刀筋は悪くなかったけれど、未熟で物足りない技量が、何時しか、何時の間にか。
大聖堂で奴と対峙する瞬間は心地好かった。
昂揚し、研ぎ澄まされる神経。
戦場のそれだ。
もっと深く、永く味わっていたい。
擦り切れるまで、砕け散るまで。
(もう一度、剣を交えたら)
答えが出るかもしれない。
だが、無理だ。
自分達を拘束した軍人。
あれは、既に罪人を裁く様相を呈していた。
自分一人を捕らえればすむと思っていたのに、バイロクスや結晶騎士全てに捕縛命令が出されているのは、カルセドニーにとって計算外だった。
軍は、徹底して教会の権力を削ぐだろう。
先は見えている。
悲観ではない。
ただ、少し。
――……疲れたな。
諦めぬ力。
シングならきっと何とかしようとあがくんだろうが。
自分一人の命と引き換えに、幾多の部下の命が救えるなら安いものだと、思ったのも事実。
恐らく、希望した皇帝への目通りも叶わぬだろう。
パライバ様は、内乱に対して遺憾を顕にされていると聞く。
教会への不信感も深いと。
自分は――……
もう二度と、あの能天気に調子を狂わされる事が無いのだろう。
信念を突き崩される事が無くなれば、自分を保てる。
奇妙な充足感と船室の微妙な揺れに任せて、カルセドニーは、ゆっくりと瞼を閉じた。
☆☆☆コメ☆☆☆
微妙ーな、シンカル、ですよ。
プランスールの後、って感じで。
適当な散文なので突っ込みは無しで。
時系列とか間違ってたらすいません。
考え過ぎかも、やけど、シーブルとカルセドニーって、やっぱ意図的なんかな……
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