雑記。
同人につき、閲覧注意。
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※BL、同人注意
※以上を理解出来ない、知らない、嫌いな人はバックプリーズ。
※閲覧後の苦情は受けません。
めさめさ古い、昔々に書いたものを、一切手直しせずに載せるクオリティの低さをご了承ください。
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※http://id23.fm-p.jp/13/sly00cruel30/黒マオ&保護者サレ推進同盟☆★
より、お題いただきました。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
『マオサレで15のお題』
7.盗む
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「あれ、気が付いた?」
琥珀の灯りに、ぼんやりと浮かぶ青く細いシルエット。
紫の癖っ毛に、綺麗な色の――。
「……誰?」
「隊長を呼んできてあげるから、暫くそのままで居なよ」
早足で背を向け、扉取っ手を掴む白い指先。
薄暗がりで目を凝らせば、やけに白く浮かんで見えたのは手袋のせいだと分かる。
「待って」
呼び止めたら意外にすんなり足を止めた。
その半身が、薄ぼんやりとかろうじて確認できる。
細い肢体から伸びる手が僅かに握る力を緩めた気がした。
「何?」
尋ねられる理由は簡単で。
だって、そっちは暗いから。
もう一度、見たいから。
ぼんやりとしか、網膜に映されなかったから。
枕元を照らす灯火が邪魔だ。
照らすべきを照らさないで、意味を為さない。
「……もうちょっと、傍に居て」
「悪いね、子守りは苦手なんだ」
灼き付いたのは色彩だけ。
その、澄み切った、美しい。
そうして、振り返る事なくさも当然に扉を締める彼。
彼自身が頼りなく見えたのは、炎が揺らいだせいなのか。
一瞬の違和感を残して、彼は戻らなかった。
暫くして、代わりに現われたのは、体格の良い黒豹。
喜ばしい事には、ボクに名前が出来た。
記憶も、何にも無いボクに。
まるで刷り込みを受けた雛。
父のように慕い、その後ろを附いて回って数日。
ユージーンは優しくて、頼りになって、お城では中々の階級にあたるヒトらしくて、後ろから眺める敬礼の嵐が壮観。
フォルスの扱いに慣れた頃――といってもそんなに長期間訓練しなくても、直ぐに扱えたのだけれど――、あの背中を見つけた。
青い背中を。
ちっとも隙が無い。
あれは幻だったのかな、訝る程に。
何度か見掛けるうち、彼の行動パターンやスケジュールが分かってきて、わざと訓練の時間を遅らせたりした。
ユージーンにこってり絞られたけど、ボクが勉強嫌いって思ってるだけで、彼を追いかけてるとは気付いてないのが救い。
今も、こっそり城を抜け出す彼の背中をひたすらに追う。
ボクは覚えてる。
記憶も何も持たないボクが、初めて目にしたヒトを。
暴走してたけど、意識はあったから。
駅から中央へ向かう列車に乗り、南門に着くとバルカの霧は一層濃くなって、目を放した隙に彼を見失った。
慌てて飛び降り、きっと食材屋だろうと街路を早足で駆ける。
「ねぇ、追いかけっこは愉しいかい?」
「わぁ!」
角を曲がった途端、紫の癖っ毛が目前にあって背が跳ねる。
「こそこそ付け回ってるのはキミ?僕、追い回すのは好きだけれど、逆は苦手なんだよねぇ、名無しの坊や」
名無し、て一応は認識されてたのかな?
でも。
「マオ」
「?」
「ボクの名前。ユージーンがつけてくれたの」
だから、名無しじゃないよ。
覚えて、お願い。
付け足したのは心の中。
それに。
「へぇ、隊長が。成る程、確かにキミは'無'いから」
――……わ、凄い皮肉屋っぽい。
見た目に似合わず厭味だ。
怯んでいられないボクは、俯きがちに絞りだす。
「…教えてヨ」
「もしかして、僕の名前?」
ふと顔を上げたら、これは初めての表情。
端正な顔立ちが呆けた顔をしたのも束の間、直ぐに歪む。
「ハハハ、傑作だね。坊やは知らないから、こんな事をしでかした訳か」
「何、それ」
光が、瞳に宿る。
鋭い。
刺すような、冷たい光が。
「四聖のサレに、近付く愚か者は居ないよ。自分の身が大事なら、尚更」
それでも綺麗だ、不謹慎かな、分かっているけれど。
腰を屈める所作に、思わず見とれてしまう。
「それとも、死にたがり?キミってマゾなのかな?」
水縹の虹彩。
鼻先を突き合わせるような近くで見たら、透き通っているのに深くて、薄く翠がかった不思議な色。
黙っていると、圧迫感が薄れた。
冷たい目線は変わらなかったけれど。
「分かったら、今後、僕の目端に映らないようにするんだね」
遠ざかる青い背中が、近付くなと云っていた。
何でだろう。
「……サレ」
僅かな炎の向こうで、揺れた表情(ひとみ)。
関わるなと警告する君。
無意味な警鐘。
触れられるのを恐れているのか。
冷酷を装っているのか。
分からないけれど、多分関わらずに居るのは無理だ。
盗まれたから。
その、静かな湖畔を連想させる双鉾に。
汽車の音が聞こえて、マオは来た道をとって返したのだった。
より、お題いただきました。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
『マオサレで15のお題』
7.盗む
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「あれ、気が付いた?」
琥珀の灯りに、ぼんやりと浮かぶ青く細いシルエット。
紫の癖っ毛に、綺麗な色の――。
「……誰?」
「隊長を呼んできてあげるから、暫くそのままで居なよ」
早足で背を向け、扉取っ手を掴む白い指先。
薄暗がりで目を凝らせば、やけに白く浮かんで見えたのは手袋のせいだと分かる。
「待って」
呼び止めたら意外にすんなり足を止めた。
その半身が、薄ぼんやりとかろうじて確認できる。
細い肢体から伸びる手が僅かに握る力を緩めた気がした。
「何?」
尋ねられる理由は簡単で。
だって、そっちは暗いから。
もう一度、見たいから。
ぼんやりとしか、網膜に映されなかったから。
枕元を照らす灯火が邪魔だ。
照らすべきを照らさないで、意味を為さない。
「……もうちょっと、傍に居て」
「悪いね、子守りは苦手なんだ」
灼き付いたのは色彩だけ。
その、澄み切った、美しい。
そうして、振り返る事なくさも当然に扉を締める彼。
彼自身が頼りなく見えたのは、炎が揺らいだせいなのか。
一瞬の違和感を残して、彼は戻らなかった。
暫くして、代わりに現われたのは、体格の良い黒豹。
喜ばしい事には、ボクに名前が出来た。
記憶も、何にも無いボクに。
まるで刷り込みを受けた雛。
父のように慕い、その後ろを附いて回って数日。
ユージーンは優しくて、頼りになって、お城では中々の階級にあたるヒトらしくて、後ろから眺める敬礼の嵐が壮観。
フォルスの扱いに慣れた頃――といってもそんなに長期間訓練しなくても、直ぐに扱えたのだけれど――、あの背中を見つけた。
青い背中を。
ちっとも隙が無い。
あれは幻だったのかな、訝る程に。
何度か見掛けるうち、彼の行動パターンやスケジュールが分かってきて、わざと訓練の時間を遅らせたりした。
ユージーンにこってり絞られたけど、ボクが勉強嫌いって思ってるだけで、彼を追いかけてるとは気付いてないのが救い。
今も、こっそり城を抜け出す彼の背中をひたすらに追う。
ボクは覚えてる。
記憶も何も持たないボクが、初めて目にしたヒトを。
暴走してたけど、意識はあったから。
駅から中央へ向かう列車に乗り、南門に着くとバルカの霧は一層濃くなって、目を放した隙に彼を見失った。
慌てて飛び降り、きっと食材屋だろうと街路を早足で駆ける。
「ねぇ、追いかけっこは愉しいかい?」
「わぁ!」
角を曲がった途端、紫の癖っ毛が目前にあって背が跳ねる。
「こそこそ付け回ってるのはキミ?僕、追い回すのは好きだけれど、逆は苦手なんだよねぇ、名無しの坊や」
名無し、て一応は認識されてたのかな?
でも。
「マオ」
「?」
「ボクの名前。ユージーンがつけてくれたの」
だから、名無しじゃないよ。
覚えて、お願い。
付け足したのは心の中。
それに。
「へぇ、隊長が。成る程、確かにキミは'無'いから」
――……わ、凄い皮肉屋っぽい。
見た目に似合わず厭味だ。
怯んでいられないボクは、俯きがちに絞りだす。
「…教えてヨ」
「もしかして、僕の名前?」
ふと顔を上げたら、これは初めての表情。
端正な顔立ちが呆けた顔をしたのも束の間、直ぐに歪む。
「ハハハ、傑作だね。坊やは知らないから、こんな事をしでかした訳か」
「何、それ」
光が、瞳に宿る。
鋭い。
刺すような、冷たい光が。
「四聖のサレに、近付く愚か者は居ないよ。自分の身が大事なら、尚更」
それでも綺麗だ、不謹慎かな、分かっているけれど。
腰を屈める所作に、思わず見とれてしまう。
「それとも、死にたがり?キミってマゾなのかな?」
水縹の虹彩。
鼻先を突き合わせるような近くで見たら、透き通っているのに深くて、薄く翠がかった不思議な色。
黙っていると、圧迫感が薄れた。
冷たい目線は変わらなかったけれど。
「分かったら、今後、僕の目端に映らないようにするんだね」
遠ざかる青い背中が、近付くなと云っていた。
何でだろう。
「……サレ」
僅かな炎の向こうで、揺れた表情(ひとみ)。
関わるなと警告する君。
無意味な警鐘。
触れられるのを恐れているのか。
冷酷を装っているのか。
分からないけれど、多分関わらずに居るのは無理だ。
盗まれたから。
その、静かな湖畔を連想させる双鉾に。
汽車の音が聞こえて、マオは来た道をとって返したのだった。
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