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昨日晩あたりにちまちまっと書いてみた短編。
リハビリですので適当に流してください。
ってか長編かかなきゃねー・・・
お久ぶりのスレイです。


以下、閲覧注意。
BL、同人を知らない人、受け付けない人の閲覧禁止。
閲覧後の苦情は受け付けません。

The Fool

天の続く限り、地があるものだと。

永続性の指標のように、愚者はその足を踏み出すのだろう。

眼下に広がるそれは、彼にとって現実味のない、虚構であるかのように。

ただ、その足を踏み出す瞬間。

その瞬間に彼が何を思うのか、またその帰趨を知る由もないのだが。

 

 

人は愚かだ。

それは自身にも適合する文言だろうが、それはさておいて眼前で繰り返される激しい戦闘に、彼は幾度目か分からぬ嘆息を繰り返している。

火花が散り、金切り声のように金属が擦れあうのが、優れた聴覚にとって堪らなく不快だった。

仲間、と呼べるだろうか。

彼らからすれば仲間、というのだろう。

それは魅力的な言葉でもなく、甘美な響きも伴わない。

何故なら、利己的な自身を際立たせるからだ。

彼らに同行することで、彼らを利用している事に気づく。

知識の先端を垣間見る度に、それは色濃く刻み込まれる。

クレアバイブルにしろ何にしろ、彼らと共にいなければ手に入らぬ情報が如何程あるというのか。

その結果が産出するものが無かったとして、可能性を否定するものでない事は幸いだった。

それに慣れていた。

今回も外れだった、そう思えばいい。

目的は達せられないが、絶望よりは救われる。

絶望は不幸だ。

知らぬ方が幸いだと知りつつも、諦めきれなかった。

縋れるならばしがみついていたかった。

決められたレールを走るのと同じで、追い縋り、目的の為に身を窶(やつ)す方が、どれほど充実しているか。

その終焉は唐突に来た。

見たくもなかった筈の彼の人の出現によって。

レールの先にあった筈の、人に戻る一縷の望みも潰えて、途方に暮れた。

全てが終わった訳ではないと自分に言い聞かせたが、気休めにもならなかった。

浮遊する心地。

地に足がついているのか疑うほど、足元が覚束ないのだ。

踏みしめていた大地はどこに行ったのだろう。

再び金属音が鼓膜を穿ち、そしてまた、溜息を吐く。

既に戦闘からは目を背けて放擲(ほうてき)している彼の隣に、見慣れた黒いローブが翻る。

苦々しく見上げれば、いつも通りの胡散臭い顔。

 

「相変わらずですね、皆さんは」

 

それを、聞かず見なかった事にして、ぐるりと椅子を反転させる。

けたたましく皿の割れる音がした。

数枚程度ではないかもしれないが、気にするのも億劫になっている。

 

「ちょ、あからさまに避けないでくださいよ」

 

背後から飛んでくる皿を躱しつつ、軋んだ床を足早に通り抜けると、開閉した扉から南中する太陽の光が差し込んでくる。

喧騒は遠ざかっている。

静かになった。

本当にそう思う。

 

「ねえ、無視しないでくださいってば、ゼルガディスさん!!」

 

ああ、置き忘れていた。

あれは閉ざした扉の向こうに置いて来た筈だったのに。

茶バネくんには、酒場こそが相応しい。

ゼルガディスと呼ばれた白い貫頭衣の青年は、踵を返して黒いローブの男に向き直った。

そしておもむろに。

 

「はい?何で押すんですか。酒場に戻るってことは、リナさんたちを止めるんですかね?そうですよねーたかだかハム一枚で争うなんて見苦し・・・って何でそこで扉を閉めるんですか???訳わかんないですよ、置き去りですか?!?」

「うるさい、黙れ」

「黙りません。置いてかないでください」

「何でついてくる、ゼロス」

「あの場に置き去りにするなんて、あんまりです」

「ならここで置いていく」

「一緒に居させてください」

「嫌だ」

「どうして?」

 

聞かれて、咄嗟に返せなかったのがゼルガディスの敗因だった。

口元をひん曲げると、ゼロスは勝ち誇った笑みを浮かべてゼルガディスの顔を覗き込んだ。

 

「弱っているゼルガディスさんを、放っておけないでしょう?」

「誰が弱ってるんだ」

「ほら、それ」

「?」

「眉間に手を当てる癖。それって、ゼルガディスさんが悩んでる時や苛ついている時にする癖ですよ」

「お前の相手に疲れてるだけだ」

「違いますよ、さっきの酒場でも相当生気のない溜息ついてたでしょう?」

「・・・いつから居た?」

「最初からです。リナさんがディアボラ風ボーボー鳥の丸焼き~季節の木の実添えを頼んだ時から」

 

呆気にとられ、ゼルガディスはもう彼に反論する気力を喪失してしまった。

取り繕っても無駄なのならば、意味がない。

意味がないことに体力を費やすのは、いろんな意味でタメージが大きい。

 

「僕が一緒の方が、いいでしょう?」

「何でだ」

「独りだと、考える時間が多すぎますよ」

「構わん」

「考える時間があるから、色々煮詰まってるんです。そう深く考えずに、耐えず新鮮な空気を脳に送り込んでみては如何です?そうやって見えてくることもあるのでは?」

「・・・・・」

「それも悪い癖ですよ。不服を内に溜め込むにしても、ね」

「悪かったな」

 

悪いなんて思ってないくせに、とゼロスは笑んだ。

普段からの胡散臭さに輪をかけた感じだ。

 

「じゃあ、気分転換にこの街の図書館にでも行きましょうか」

「行って何を探す?もう目的なんて・・・」

「諦めるんですか?」

 

癪に障る。

ゼロスと話している時には溜息を吐いていない、それに気づいてからは尚の事。

こいつに乗せられているのだ。

分かってはいる。

けれど。

 

「諦めない」

「ですよね。それでこそゼルガディスさんです」

「どういう意味だ」

「そのまんまですよ」

「で、その図書館とやらはどこにある?」

「まあまあ、そう急がなくても良いでしょう?行きがてら、かき氷でも食べましょうよ。先刻酒場で何も口になさってなかったでしょう?」

「お前は必要ないだろうが」

「人生の楽しみの一つですよ。寄り道って」

「お前が言うか」

「はい」

 

ほらほら、グラッタケッカって云うんですよ、この街独特のかき氷なんですから、食べなくちゃ損ですよ、などと言いながらいそいそと出店の列に並びだす黒いローブを見送りながら。

こいつの敷いているレールを試してみるのも、悪くはないと思ってしまった。

 

 

★★★コメント

 

久しぶりにちゃらちゃら書いた。

スレエボ後の話、だいぶ前に書いた話とは若干話が矛盾する形で、視点を変えて書いてみました。

長編書く前のリハビリってことで・・

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