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何だか黒い話ばかり書いてると、この人、気がおかしいんかな―と思われそうなんで。
もう一個アップします。
でも何だかしみじみ?書いてたら、話の根底というか、根幹というか、落ち着きどころを見失ってしまったので、かなりグダグダしてます。
話的には何だかなー、と書いてる本人が自覚しております。


リュー/ナイトです。
一応ガル/サルです。

※BL、同人注意
※以上を理解出来ない、知らない、嫌いな人はバックプリーズ。
※閲覧後の苦情は受けません。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
aequum
 
 
 
記憶は確かだった。
とはいえ、自信があった訳ではない。
戦いの最中であったというのに、あの時の騒動は忘れられない、平和なひと時だったというだけ。
邪竜族の事を、束の間でも忘れられていたのだ。
 何処かの音速馬鹿を除いて。
いや、正確にいえば奴こそ忘れていただろうか。
鬱蒼とした木々を足音も無くすり抜けていく黒い影に、小動物は気づく事すらなく常の通り振舞っている。
街道を外れて最深部を目指し、今は僅かな水音を頼りにしていた。
生き物の気配が遠ざかり、水の匂いが近い。
やがて視界が開ける。
ゆるり、泉に近づく。
警鐘。
戻れなくなる。
何に?
何処に?
此は、畏れか。
透き通った湖面に反して生物の影はなく、静かだ。
薄い碧翠色は記憶の色だ。
海馬から大脳皮質へ、線と線を辿り、繋ぎ合せる。
あの涼やかな双眸を思い出すには充分だった。
やたら淋しそうな眼を奴がしていた、それだけのことだ。
アデューの馬鹿が、身長がどうとかぬかしていた時に。
あんな表情は見たくなかった。
かといって、あの音速のように仲良しこよしするなんて、自分には土台無理な話だった。
どうすれば良い。
出した答がこれとは、我ながらどうかしている。
愚かだと笑えば、幾分か気分が紛れた。
少しで良い、透き通ったそれを一掬いして、聞こえてくる旅人の足音に、とっさに身を隠す。
それは、近い過去の既視感を呼び起こしていた。
 
 
 
▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽
 
「やっぱり、行くのかい?」
 
手入れされているとはいえ、薄汚れた祠は昔のまま。
その所有者―――百地一族の後継者が、その流石ともいえる技量で気配を絶って自分の背後に立っていた。
長い黒髪の女性は幼馴染であり、その黒目が突き刺さる。
 
「こいつ迄付き合わせる訳にはいかねぇ」
 
彼女は祠に進み出て、その内部に収納されているものを取り出した。
元あった場所に戻された、それ。
里が襲撃された時に、自分が勝手に持ち出していたものだ。
逡巡する白くしなやかな手は、十二分に宙を彷徨して躊躇を表し、幾分かして眼前の青年に手の中の物を突き出した。
 
「これは、やっぱりあんたのだ。乗り手がいるのに、リュ―が他の持ち主を決めるとは思えないよ」
「いや、ミストロッドは元々モモチ一族の物だ。イオリ、頼む」
 
胸骨に押し当てられたミストロッドに触れさえしない。
彼の決意に、イオリも強行する事を阻まれた。
リューは、何れ必要になる。
来るべき二つの月が重なり合う凶事――千年紀毎に訪れるミスティックフィールドの弱体化――に備えるには、当然の判断だろう。
邪竜族の王は退けたが、それは今の時代の事。
荒れ果てた彼の地では、次世代の邪竜族の後継達が虎視眈眈とこの地を狙っているのだから。
後継者は、用意するべきだ。
所在の分からぬ乗り手をリューが待ち続けるのは、滑稽だ。
 
「分かったよ。だけど、闇風は持って行きな」
「おい、」
 
抗弁する余地も無く、イオリはミストロッドを胸元に仕舞いながら続けた。
 
「いいかい。それで、いつか・・・返しに来な。それが、アタシでなくて良い。それから」
 
早足でまくしたてた為か、イオリは一度言葉を切ると呼吸を整えた。
迷っているのか。
違うな、長い付き合いだ、分かっていて誤魔化そうとするのは彼の悪癖であった。
イオリの真摯な眼差しが痛かった。
嗤えない。
きっと自分は情けない顔なのだろうと、自らを叱咤した。
 
「偶には姿を見せな。アタシに」
「・・・分かった」
 
それが、アタシでなくて良い―――・・・
 
イオリの声が、やけに鼓膜にこびり付いていた。
気付き始めていた。
闇風は、イオリに返せないのだと。
返してはいけないのだと。
精霊石を返してしまえば、途切れてしまうのだと。
イオリ自身が気づいていたのか、分からない。
ただ、繋がりを絶つのを恐れている。
それだけは彼の内に残された。
 
 
 
 ▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽
 
暫し、王国の離別を惜しんでいた。
パティとアレクも言わずもがなであるが、ナギトの男泣きは、これは家系だろうかと毎度ながら祖先の血を実感させられる。
成人の儀式後、過ぎた歓待を受けたのは瞬く間のようでもあり、長くもあったようでもあり。
この心地よいしがらみを噛み締めながら、聖騎士との遠い約束に想いを馳せていた。
パフリシア全景を見渡せる丘からこの国を眺めながら去るのが慣習になっているが、今日は何だか違う景色に見える。
傾きかけた陽が、淡い橙に城下町を染め上げていく。
ここが、いつでも自分を迎えてくれる土地となっているのだ。
そう感じるだけで、何とも説明のつかぬ感情が生まれてくる。
エルフの兄妹に呼び止められたのは、まさにその時だった。
 
「随分吹っ切れた顔をしているな」
「まあな。・・・まだ何か用か?」
「いや・・・」
「兄ちゃん、はっきりしいや」
 
妹に小突かれても、兄の方は何故だか言葉を濁していた。
それは、ガルデンにとっても不自然に見え。
煮え切らぬヒッテルに元来短気な――とはいえ年月の経過により最近は気が長い方だと自負している、が老年化していると揶揄されることも少なくない――ガルデンは。
 
「何なのだ、一体。云うことがあるなら云え」
「ガルデン。あいつは上手く隠れているが・・・詰めが甘い」
「何のことだ?」
 
そのままの意味だと背を向けた相変わらず言葉の足りないエルフに説明を求めると、アデューの墓に行ってみろ、とだけ残して去って行った。
ごめんなー、いいから行ってみ、でもそーっとな、と妹の方が無愛想な兄をフォローするかのような愛想のよさで笑った。
かくしてパフリシアに一旦引き返す事にしたのだが。
 
(アデューの墓だと?)
 
昨日も墓に行った。
別段変わったこともなかったし、今日来たからと云ってまた変化があるわけでは無いだろうに。
闇に染められつつある城内を、コソ泥のようだな、と自嘲しつつ忍び込む。
エルフと邪竜族の血の為、夜目には自信がある。
庭園の先にあるそこを目指していて。
ふ、と。
懐かしい気配がした。
この百年、感じてすらいなかった気配。
ある時を境に、ぷつりと消息を絶った男の気配だった。
彼の所縁の土地を訪れた際に、泣き黒子が印象的なくの一――彼の幼馴染でもある――にその行方を尋ねた事がある。
死んだと、聞いた。
その訃報は早すぎて、アデュー達も信じられないといいながら、彼の姿がどこにも見つけられなくなった事でその現実を受け入れていった。
その、彼が?
そんな筈は無い。
ガルデンは気配のする方向を目指していて、アデュー達に子孫がいるように、彼にも子孫がいて当然なのだから、驚く程の事でもないかもしれないと思い直した。
ぱきり。
乾いた小枝を踏み潰しても、臆する事はなかった。
唐突に、気配は消えた。
構わず、ガルデンは庭園を抜けた。
石畳の向こう。
長年の年月を重ねて巨木となったそれに包み込まれるように、墓石がある。
アデューの墓標の前には、昨日はなかった黄色い小さな花が添えられていた。
 
「そこにいるのだろう」
 
途端、焦りの感情を宿した気配が復活する。
それは微々たるものではあったが、自分には捉えられる。
 
「出てこないのか」
 
問いかけは空しく。
この場所で隠れる場所などたかが知れている。
ガルデンは天高くその手を掲げ。
 
「ライダー・・・」
「っ、待て待て」
 
鼓膜を打ったのは、懐かしい声に似ていた。
いや、まるでそのものだ。
だが記憶は百年も前のものだ。
それでも彼を感じた。
夢か、現か。
訳も意味も分からずに、ただ、無意識に。
 
「・・・サルトビ?」
 
名前を呼んでいた。
そんな筈は無いのに。
在り得ないのに。
アデュー達がいなくなって、孤独を知った。
未だ実感はない。
彼らがいないという現実は、彼らを目にしないだけでまだ何処かにいるような気がするだけで―――けれど確かに、どこにも彼らはいなくて。
確かにいないのだ。
けれど、今、ここには?
沈黙は、長かったように思えた。
答える気はないのだろうか。
 
「ライダー・ソード」
「うわっ・・・分かった、今降りる」
 
小枝を折る程度の雷に、彼は降参してくれた。
早く―――
早く、その姿を―――・・・
 
「ひっでぇ挨拶だな。ま、てめぇに挨拶なんざ期待しちゃいねぇけどよ」
 
簡素な忍び装束。
それは記憶にあるものとそう変わりはしない。
変わらない?
時が、滞留しているかのようだ。
彼の周りだけ時は流れず、そして自分の時も止めてしまった。
 
「ま、そういう反応は予想してたけどよ。久しぶりだな、ガルデン」
「・・・何の冗談だ」
 
幻聴なのか。
幻影なのか。
その肩を握る感触は確かなのに、存在自体に納得できない。
 
「何故おまえがここにいる」
「悪かったな、ここにいるのが俺で。アデューじゃなくてよ」
 
気にいらねぇのは百も承知だ、と背を向けようとするが、自分が彼の肩を握っている為それも出来ないらしく。
 
「とっとと出てくから放せよ」
「何故だ」
「お前はアデューとの約束を守ってんだろ?関係ない俺は失礼させて貰うぜ」
「違う、おまえがここにいる目的を聞いているのだ」
「俺が、目的があるからここにいるって?」
「違うのか?」
「ただの感傷。気まぐれかもしれねぇな」
「ここに隠れていると、ヒッテルが云っていた。理由があるのだろう?」
 
詰問すれば、サルトビが言葉に詰まった。
矢張り目的があるらしい。
こいつもアデューとなにがしか約束をしていたのかもしれない。
彼が生きている理屈はどうでも良かった。
何の為に、彼がここにいるのかが純粋に、知りたかった。
自分の付き合いより彼らのそれの方が長く、親友なのだとアデュー自身が云っていたのだから自分が知らない決め事の一つや二つがあってもおかしくはない。
それは若干悔しい気もするが、ある種の諦念がガルデンにはあった。
彼にこの感情は理解できないだろう。
アデューに憧れていた。
自分は彼とあのような関係は築けないと分かっていたから。
彼と和解したとはいえ、元より一族の仇敵だった自分の為に彼がそういった感情を抱く筈もないだろう。
羨ましかった。
旅の途中、息の合った連携を自然に、それを当たり前のように動く彼らが。
云いたい放題の喧嘩を何度も止めた、それでも最後には笑いあっていた事が。
彼が死んだと聞いてあけすけに嘆くアデューが。
自分には何も出来なかった。
絆を確かめることも、――・・・嘆く事も。
すべて遠い事象だった、それが今。
 
「・・・だよ」
「?」
「俺の勝手だろ、って言ったんだ」
「あーあー。予想通りの展開とはいえ、素直やないなぁ」
 
と、闖入したエルフの少女――見た目だけで年はそこそこいっている――に、彼が瞠目し。
 
「カッツェ!」
「そないなことになるんちゃうかと思て、後つけててん。あのな、そいつがここにいるの、ここで成人の儀式がある時だけやで」
「は?」
「ま、そういうことやから、後はよろしゅうに」
 
全く、兄ちゃんが言葉足らんからややこしいことなるねんで、とエルフ兄妹の漫才のようなやり取りを遠目に見送って。
嵐のような登場と引き際に少しの沈黙が流れてから、ガルデンは乾いた喉に唾液を送り込んでみた。
それから。
 
「・・・サルトビ」
「てめぇはお気楽だな。なんだってんだ、畜生」
 
笑いが、堪えきれなかった。
サルトビが苦虫を噛み潰したような顔で。
覆面では分かり辛いが、頬を紅潮させている。
矛盾した感情が、彼の中にあるのだろう。
ガルデンには堪らなかった。
 
「ずっと見ていてくれたのだな」
 
そう、自分でも背筋が寒くなるような台詞を恥ずかしげもなく吐き出すと。
やめろ、気味わりぃ、と、そっけない返答が返ってくるばかりだった。
 
 
 
 
 
 
★★★コメ
 
途中までネタ出して書き溜めてたのを、今さら一気に終結させる作業をしております。
まずは短編から。
延々と終結させてます。
複数扱っているせいもあってか、もともと書こうとしていた路線を見失っている気がするのも、自覚。


CDドラマネタですね。
聖騎士のあれと、若返る泉のあれです。
 
楽しんでもらえたらいいなーと思いつつ、何だか重い話のテイストで書いてしまうので、底抜けに明るいギャグとか書けないものかと思案します・

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